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【ネタバレ解説】映画『ヤクザと家族 The Family』色分けによって表現された世界観

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どうも、こんにちは。ズバ男です!

この記事は映画『ヤクザと家族 The Family』をネタバレありで本作の大きなみどころとなっている”叙情的表現”を中心に徹底解説していくものです。

本作でメガホンをとったのは、伊坂幸太郎原作の映画『オー!ファーザー』で長編映画デビューを果たした藤井道人監督です。2019年公開の『新聞記者』で日本アカデミー賞など数多くの賞を獲得し、今最も注目される監督のひとりです。

そんな藤井道人が描く本作は近年映画界でも淘汰されつつある”ヤクザ”をテーマとした作品です。1人のヤクザに焦点を当てつつ現代社会から排除されていったヤクザの世界を3つの時代で描く壮大な物語です。

”ネタバレ”を含む記事なので未鑑賞の方はご注意ください

【作品情報】

2021年 136分 PG12

『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀作品賞を獲得した藤井道人が”家族”をテーマに3つの時代をヤクザたちそれぞれの視点で描いたオリジナル作品。

スタッフの紹介

監督/脚本:藤井道人

企画/製作:河村光庸

プロデューサー:佐藤順子/角田道明/岡本圭三

撮影:今村圭祐

美術:部谷京子

衣装:宮本まさ江

音楽:岩代太郎

主題歌:millennium parade/「FAMILIA」

キャストの紹介

緑が役名、黒が俳優名
山本賢治:綾野剛

柴咲博:舘ひろし

工藤由香:尾野真千子

中村努:北村有起哉

細野竜太:市原隼人

木村翼:磯村勇斗

川山礼二:駿河太郎

大迫和彦:岩松了

加藤雅敏:豊原功補

木村愛子:寺島しのぶ

 

 

【「色」によって各時代の世界観が表現されていた】

この映画は時代の流れで排除されていくヤクザたちを3つの時代に分けて描いた作品です。その3つの時代を描くにあたって主人公・山本賢治のスタイル(服装の色や髪色)がその時代の世界観を表現しているので、ここではそれについて解説していきます。

1999年:「家族」との出会い

1999年物語の冒頭、賢治がまだヤクザの世界に入るまでの衣装は”白”のダウンジャケットに”金髪”といったスタイルでした。

”白”=何色にも染まっていないある意味純朴な状態

”金髪”=この社会すべてに対しての反抗心、自暴自棄になっている様を表している

2005年:「家族」を守るための戦い

ヤクザの世界に入った賢治は”黒”のスーツに”黒髪”で、夜になってもいつもサングラスをしています。

工藤由香に夜でもサングラスしているのをイジられていましたよね。「夜にサングラスしてて見えるのか?」と、ここでのセリフには賢治とこの時代を表す意味があったように思います。

2019年:激変した社会に生き場を失くしていく「家族」

ある事件で14年刑務所に入っていた賢治は出所後、あまりにも世界が変わったことに困惑します。

出所した時の賢治のスタイルは”灰色(グレイ)”のスーツに髪の毛もはっきりはしないが”白髪”交じりのグレー色っぽくなっている。

ここでは、1度でも黒く染まったものはどれだけ白くなろうといても白色には戻れないという事を表現しているのだと思います。

そのことは賢治の事を慕う翼(木村愛子の息子)のスタイル(服装や髪色など)にの表現されているので注目してほしいです。

 

 

【随所に仕掛けられた視覚表現に”妙”を感じた

本作の大きなみどころとなっているのがビジュアルテーマが叙情的表現として使用されているところで、さきほど紹介した「色分け」以外にも数多く仕掛けられています。その中でも大きな効果を出しているのが「煙」によって描かれている視覚表現です。

煙を使った言葉はたくさんありますが、この映画を観て「煙を巻く」、「狼煙を上げる」、「煙たがられる」など忌み嫌われるような言葉が次々と連想されました。

途中何度も差し込まれる工場の煙突から排出される煙のシーンが印象的ですが、このシーンはどの時代にも流れるものです。ここからは「どれだけ街がキレイに整備されようが上辺だけで本質は何も変わらない」といったメッセージを感じます。

「煙」を使った演出は他にもあり、食卓に並んだスープの湯気などは”幸せ”を連想させるものになっていましたね。

 

 

【まとめ

藤井道人監督の手によって生まれた『ヤクザと家族 The Family』は一見するとよく出来た商業映画に感じますが、ドキュメンタリーのようなリアリティーある内容を数多くの視覚効果とテーマ分けされた世界観で緻密に計算された作品としても仕上がっていました。

この映画は一度観た後、数年後に今と違う世代になった時、今と違う環境になった時など人生の転機に観直すと、違うイメージが持てる作品になっていると思います。

”大好きな小説のように…” 色んな顔を持った素晴らしい作品でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。