映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、本年度カンヌ国際映画祭で7分半のスタンディングオベーションを浴びた、ウェス・アンダーソン監督による極上のブラック・コメディ作品です。
ベニチオ・デル・トロ×トム・ハンクス×スカーレット・ヨハンソンという豪華キャストが織りなす、家族の絆と再生を描く感動作。アカデミー賞級の美術と実在の名画で彩られた映像美が、あなたの心に新たな”家族の愛”を刻みます。
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』を観るあなたに、物語の深みと見どころを徹底ガイド。この記事を読めば、映画の隅々まで楽しめること間違いなし!
1. 一線を画すファミリー・コメディの魅力
1-1. 家族の絆と再生を描く本格派ブラック・コメディ
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、ウェス・アンダーソン監督が「家族」を主題に描く原点回帰作です。1950年代の架空国家フェニキアを舞台に、6度の暗殺未遂を生き延びた大富豪ザ・ザ・コルダが、疎遠だった修道女の娘リーズルと心の距離を縮めようと奮闘します。
本作の魅力は、ブラック・コメディでありながら「家族の愛と絆」という普遍的テーマを深く掘り下げている点です。富と権力に固執する冷徹な父と、精神的な豊かさを求める清らかな娘。大富豪の豪邸と修道院という対極的な環境も描かれ、父娘の異なる価値観――金銭・権力vs精神性――のぶつかり合いと和解が、物語の中心となります。
1-2. 1950年代フェニキアという架空の世界観
本作の舞台となる「現代の大独立国フェニキア」は、中東地域を彷彿とさせる架空の国です。ウェス・アンダーソン監督は、実在しない場所を設定することで、時代や地域に縛られない普遍的な物語を描くことを可能にしました。
この架空の世界設定により、監督は自由に美術デザインを展開でき、イタリアのパラッツォ(宮殿)風の邸宅から中東風の市場まで、多様な文化的要素を一つの世界に融合させることに成功しています。古代文明フェニキアの名前を冠し、歴史と現代が交錯する独特の雰囲気を作り出しています。
1-3. 6度の暗殺未遂を生き延びた大富豪の物語
主人公ザ・ザ・コルダは、これまでに6度もの暗殺未遂事件を生き延びた強運の持ち主として描かれます。彼の人生は常に危険と隣り合わせでありながら、巨大な富と権力を築き上げてきました。
冷酷かつ手段を選ばない彼は多くの敵を作り、命を狙われながらも、財産と計画を守るために離れていた娘リーズルを後継者に指名し、資金調達のためにフェニキア全土を巡る旅に出ます。壮大な計画の行方と家族の絆が描かれる、緊迫感ある物語です。
2. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』の基本情報
2-1. あらすじ
1950年代、架空の国「現代の大独立国フェニキア」。6度の暗殺未遂から生き延びた大富豪ザ・ザ・コルダ(ベニチオ・デル・トロ)は、フェニキア全域に及ぶ陸海三つのインフラを整備する大規模な「フェニキア計画」を推進している。
ビジネスの危機的状況を打開するため資金調達の旅に出たザ・ザは、離れて暮らす修道女の娘リーズル(ミア・スレアプレトン)を後継者に任命することを決意する。家庭教師のビョルン(マイケル・セラ)と共に旅に出る父娘だったが、行く先々で巻き起こる騒動と家族の秘密が、彼らの運命を大きく変えていく——。
2-2. 制作スタッフ
監督・脚本・原案・製作 | ウェス・アンダーソン |
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製作総指揮・原案 | ローマン・コッポラ |
撮影 | ブリュノ・デルボネル |
音楽 | アレクサンドル・デスプラ |
配給 | パルコ/ユニバーサル映画 |
製作国 | アメリカ/ドイツ |
レーティング | G |
上映時間 | 102分 |
2-3. ウェス・アンダーソン監督の過去作と作風
ウェス・アンダーソン監督は、『グランド・ブダペスト・ホテル』でアカデミー賞美術賞を受賞し、『ムーンライズ・キングダム』『犬ヶ島』など数々の名作で知られる現代最高峰の映像作家の一人です。シンメトリーな構図、パステルカラーの色彩、ミニチュア風の美術デザインなど、独特の映像スタイルで「ウェス・アンダーソン美学」という固有の表現手法を確立しています。
本作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、家族をテーマにした作品として位置づけられ、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』や『ダージリン急行』の系譜を継ぐ「原点回帰」作品として注目されています。
3. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』の見どころ
3-1. ストーリーの魅力
本作は『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』や『ダージリン急行』と同様の「機能不全家族の再生」というテーマを、現代的な視点でアップデートした作品です。暗殺の危険に常にさらされている大富豪の父親と、清らかな修道女として生きる娘という極端に対照的な二人の関係性が物語の核となっています。
主人公のザ・ザ・コルダは富と権力を追求し続けてきた結果、家族との絆を失ってしまった人物として描かれ、一方の娘リーズルは物質的な豊かさを拒絶し、精神的な充足を求める現代的な女性として描かれます。
3-2. 演出や映像美
ウェス・アンダーソン監督の映像美学が最大限に生かされた本作は、邸宅内部から、架空の大国フェニキアの多様な街並みまで、すべてのシーンが緻密に計算された美しいフレームで構成されています。特徴的なのは、「セットがセットであることを隠さない」という独自の演出思想です。
実際、バーベルスベルク・スタジオの温室屋根を利用し、自然光を大胆に取り入れて「柔らかく幻想的な光」を劇中で見事に表現。これにより、天国のシーンや主要空間に詩的な空気感をもたらしています。
【映像技術のポイント】
・シンメトリー構図:監督の代名詞である左右対称の美しい画作り
・トロンプルイユ技法:ベルリンの高名な邸宅で用いられる大理石調の壁画技法をセット装飾に採用
・ワンテイク撮影:オープニングクレジットでは、極めてテンポの速い芝居を何回もリテイクして完成
・自然光活用:スタジオ屋根を活かし、天然光による柔らかく神秘的な印象を強調
これらの工夫により、本作は観る者を唯一無二の映像体験へと誘っています。
3-3. 本物の美術品と豪華セット
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』では、ザ・ザの邸宅セットに本物の美術品が多数使われ、圧倒的な芸術空間が話題となっています。たとえば、ルネ・マグリットの「赤道」や、ピエール=オーギュスト・ルノワールの「青い服の子供(エドモン・ルノワール)」が実際に飾られています。映画撮影では通常レプリカが使われますが、本作では監督の強いこだわりにより、実際のコレクションから本物が貸し出されました。その唯一無二の豪華セットは、鑑賞者に本物の芸術作品の存在感まで伝える、特別な映画体験となっています。
4. キャスト紹介
4-1. 主要キャスト
ザ・ザ・コルダ(ベニチオ・デル・トロ)
6度の暗殺未遂を生き延びた大富豪
『トラフィック』でアカデミー助演男優賞を受賞し、『ボーダーライン』『スター・ウォーズ最後のジェダイ』でも印象的な演技を見せた実力派俳優。本作では、富と権力を追求してきた複雑な父親役を、ユーモアと深みを兼ね備えた演技で体現している。オープニングクレジットの超高速芝居は30回以上の撮影を重ねて完成させた渾身の演技となっている。
リーズル(ミア・スレアプレトン)
ザ・ザの娘で修道女
ケイト・ウィンスレットの娘として注目され、何百人ものオーディションの中から選ばれた新星女優。本作が映画デビュー作となる彼女は、物質的な豊かさを拒絶し、精神的な充足を求める現代的な女性像を繊細かつ力強く演じている。
ビョルン(マイケル・セラ)
リーズルの家庭教師
『JUNO/ジュノ』『スーパーバッド 童貞ウォーズ』で一世を風靡し、近年は『アレステッド・ディベロプメント』での好演でも知られる。ウェス・アンダーソン作品常連の一人として、本作でも独特なユーモアセンスと絶妙な間合いを披露。父娘の旅に同行する重要な役割を担っている。
4-2. その他の豪華キャスト
リーランド(トム・ハンクス)
鉄道王でフェニキア計画の出資者
2度のアカデミー主演男優賞受賞者で、『フォレスト・ガンプ/一期一会』『キャスト・アウェイ』などの名作で知られるハリウッドの至宝。本作では、ザ・ザのビジネスパートナーとして登場し、貫禄ある演技でストーリーに重厚感を与えている。
ヒルダ・サスマン=コルダ(スカーレット・ヨハンソン)
ザ・ザの”はとこ”
『ロスト・イン・トランスレーション』『マリッジ・ストーリー』でアカデミー賞にノミネートされ、マーベル映画『アベンジャーズ』シリーズでも活躍。本作では、ザ・ザの複雑な家族関係の一角を担う重要な役で出演している。
ヌバル(ベネディクト・カンバーバッチ)
ザ・ザの異母兄弟
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』でアカデミー主演男優賞にノミネートされ、『ドクター・ストレンジ』でマーベル映画にも出演。シャーロック・ホームズ役でも世界的に知られる実力派俳優として、本作でも存在感のある演技を披露している。
5. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』撮影秘話
5-1. ドイツ・バーベルスベルク・スタジオでの大規模セット撮影
本作の撮影は、ドイツ・ポツダムにある歴史的なバーベルスベルク・スタジオで行われました。1912年に設立された世界最古級の映画スタジオの一つで、フリッツ・ラング監督の『メトロポリス』(1927年)からウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』まで、数々の名作を生み出してきた聖地です。
5-2. 本物の美術品使用による贅沢な美術協力
映画史上でも類を見ない規模で本物の美術品を使用した本作では、国際的な美術品輸送と保険の専門チームが結成されました。ナーマド・コレクション、ピーチ・コレクション、ハンブルク美術館との協力により、総額数十億円相当の美術品がセットに持ち込まれました。
この徹底した本物主義により、「いい絵を買うな。名作を買え」というザ・ザの台詞にリアリティが生まれ、映画全体の格調高い雰囲気が実現されています。
5-3. 制作の舞台裏 — ロケ・美術協力・演出の工夫
取材と美術協力: ウェス・アンダーソン監督は、実在の富豪アリストテレス・オナシス、スタブロス・ニアルコス、そして監督の義父でもあるレバノンの実業家フアド・マルフを参考にしてザ・ザのキャラクターを構築しました。石油王カルスト・グルベンキアンの美術収集も重要な参考資料となっています。
撮影地と美術: トロンプルイユ技法を駆使した大理石風の壁と円柱は、ベルリン一帯の城や邸宅で実際に使われている技法を忠実に再現。イタリアのパラッツォ(宮殿)風の内装デザインは、16世紀から18世紀のヨーロッパ貴族の邸宅を徹底的に研究して制作されました。
編集とテンポ: 物語の大きな転機となるジャングル墜落シーンは、実際の航空事故の映像資料を研究し、リアリティと映画的演出のバランスを追求。天国のシーンでは、「セットの境界を隠さない」演出方針により、観客に演劇的な体験を提供する斬新な映像表現を実現しています。
ワンテイク撮影の苦労: オープニングクレジットの超高速芝居シーンでは、ベニチオ・デル・トロが30回以上の撮影を繰り返して完成。セリフの暗記から動作のタイミングまで、完璧な精度が要求される困難な撮影となりました。
6. まとめ:映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』を見るべき理由
【この映画を見るべき理由】
原点回帰:ウェス・アンダーソンが家族をテーマにした感動的な作品に回帰
豪華キャスト:ベニチオ・デル・トロ×トム・ハンクス×スカーレット・ヨハンソンの演技合戦
本物の名画:ルノワール、マグリットなど総額数十億円の本物美術品を使用
歴史的スタジオ:世界最古級バーベルスベルク・スタジオでの本格的セット撮影
高評価作品:カンヌ映画祭7分半スタンディングオベーション、限定公開作最高記録達成
映像美学:ウェス・アンダーソン美学の集大成的な映像体験
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、家族の絆と人生の本当の価値について問いかける、ウェス・アンダーソン監督の集大成的作品です。