映画『遠い山なみの光』は、ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの傑作デビュー小説を石川慶監督が映像化した感動作です。広瀬すず×二階堂ふみの共演、戦後80周年の節目に描かれる壮大な人間ドラマがあなたの心に深い感動を刻みます。
これから映画館で『遠い山なみの光』を観るあなたに、物語の深みと見どころを徹底ガイド。この記事を読めば、スクリーンの隅々まで楽しめること間違いなし!
1. 原作の魅力
1-1. 原作はカズオ・イシグロの傑作デビュー小説
『遠い山なみの光』は1982年に発表されたカズオ・イシグロの長編デビュー作品です。この作品で王立文学協会賞を受賞し、9カ国語に翻訳されるなど、世界文学史に残る傑作として高く評価されています。
この小説は原爆投下後の長崎、そして戦後の英国が舞台。日本を離れた女性が「記憶」と「母娘の絆」に向き合う姿を、静謐かつ謎めいた語りで紡ぎます。その評価は高く、イシグロの名を世界に知らしめた作品です。
1-2. 原作者・カズオ・イシグロのプロフィールと創作秘話
カズオ・イシグロは1954年長崎県生まれの作家で、5歳の時に家族と共にイギリスに移住しました。1982年のデビュー以来、『浮世の画家』『日の名残り』『わたしを離さないで』など数々の名作を発表し、2017年にノーベル文学賞を受賞した現代を代表する作家です。
『遠い山なみの光』の執筆にあたって、イシグロは自身の出生地である長崎への複雑な想いと、幼少期の曖昧な記憶を作品に昇華させました。戦後復興期の長崎の空気感や、原爆という重いテーマを、直接的ではなく繊細な心理描写で表現している点が特徴です。
1-3. 読者の反応と原作の見どころ
『遠い山なみの光』は、戦後の長崎を舞台にしながらも、普遍的な人間の心の奥底を描き、世界中の読者から「一度読んだら忘れられない」「何度読んでも新しい発見がある」と高く評価されています。
物語の語り手である悦子の記憶の曖昧さや、真実と嘘の境界線が巧妙に描かれており、読後に深い余韻と複数の解釈の可能性を残す構造が大きな魅力です。また、戦争の傷跡を直接描くのではなく、人々の心に刻まれた見えない傷を繊細に表現している点も評価が高い理由です。
2. 映画『遠い山なみの光』の基本情報
2-1. あらすじ
1980年代のイギリス。ロンドンで暮らし、大学を中退して作家を目指すニキ(広瀬すず)は、執筆のため、異父姉の死以来疎遠になっていた実家を訪れる。そこには、夫と長女を亡くした母・悦子(吉田羊)が、思い出の詰まった家でひとり暮らしていた。
悦子は長崎で原爆を経験し、戦後イギリスに渡ってきたが、ニキはその過去について何も知らなかった。数日間を共に過ごす中で、悦子は最近よく見るという「夢」について語り始める。それは戦後間もない1950年代の長崎で知り合った、佐知子という女性とその幼い娘との思い出だった。
2-2. 制作スタッフ
監督・脚本・編集 | 石川慶 |
原作・エグゼクティブプロデューサ | カズオ・イシグロ |
主演 | 広瀬すず |
共演 | 二階堂ふみ、吉田羊、松下洸平、三浦友和 |
公開日 | 2025年9月5日(金) |
上映時間 | 123分 |
製作国 | 日本・イギリス・ポーランド合作 |
配給 | ギャガ |
2017年ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロのデビュー作を、『ある男』の石川慶監督が映像化した国際共同製作による注目作品です。
2-3. 監督・石川慶の過去作と作風
石川慶監督は『愚行録』『ある男』などで知られ、繊細な心理描写、静かで奥行きのある画作りが持ち味です。2022年の『ある男』では第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞を含む最多8部門を受賞する快挙を達成しました。
本作では、カズオ・イシグロ作品の持つ「曖昧さの美学」を映像で表現することに挑戦。「記憶の不確かさ」を視覚的に表現するため、過去と現在を行き来する構成や、光と影のコントラストを効果的に使用した映像美にこだわっています。
3. 映画『遠い山なみの光』の見どころ
3-1. ストーリーの魅力
本作最大の魅力は、二つの時代と場所を舞台にしたタイムラプス構造です。1950年代の戦後復興期の長崎と1980年代のイギリスという対照的な舞台で、母と娘の関係、記憶と現実の境界線、そして戦争の見えない傷跡が丁寧に描かれます。
悦子の語る長崎での記憶が本当なのか、それとも何かを隠すための「嘘」なのか。観客は娘ニキと同じ目線で真実を探っていくことになり、最後まで予想のつかないミステリアスな展開が続きます。
3-2. 演出や映像美
石川慶監督ならではの繊細な映像美が本作の大きな魅力です。戦後の長崎の街並みを再現したセットでは、細部まで1950年代の雰囲気にこだわり、市電や昭和レトロな看板、生活感溢れる路地裏まで忠実に再現されています。
また、イギリスパートでは現代的でクールな映像表現と、長崎パートの温かみのある色調とのコントラストが印象的。記憶の曖昧さを表現するため、意図的にぼかしたシーンや光の使い方も秀逸です。
3-3. 音楽や演技のポイント
音楽は日本とイギリスの文化的背景を反映し、戦後の長崎では当時の流行歌や生活音を効果的に使用。一方、現代のイギリスパートではモダンで抑制的なサウンドデザインが物語の対比を際立たせています。
主演の広瀬すずは1950年代の長崎に生きる悦子を自然体で演じ、二階堂ふみ演じる謎めいた佐知子との関係性が物語の核心となります。特に二人の「目線」や「間」の取り方が、言葉では表現できない複雑な感情を観客に伝えています。
4. キャスト紹介
4-1. 主要キャスト
緒方悦子(1950年代)/広瀬すず
戦後間もない長崎に暮らす若い女性。原爆を体験し、戦後復興の中で新しい人生を歩もうとしている。佐知子とその娘との出会いが彼女の人生に大きな影響を与える。広瀬すずが持つ透明感と強さが、戦後を生きる女性の複雑な内面を見事に表現している。
佐知子/二階堂ふみ
悦子が長崎で出会う謎めいた女性。幼い娘・万里子を連れて現れ、悦子の記憶の中で重要な存在となる。二階堂ふみの持つミステリアスな魅力が、物語のキーパーソンである佐知子の複雑な人物像を際立たせている。
1980年代の悦子/吉田羊
イギリスで暮らす現在の悦子。娘ニキに過去の記憶を語りながら、隠された真実と向き合う。吉田羊の深みのある演技が、長い年月を経た女性の心境の変化を丁寧に表現している。
4-2. その他のキャスト
ニキ/カミラ・アイコ
ロンドンで暮らす作家志望の女性。日本人の母とイギリス人の父を持ち、母の過去を作品にしたいと考えている。物語の語り部として重要な役割を担う。
緒方二郎/松下洸平
悦子の夫となる傷痍軍人。戦争の傷を抱えながらも新しい生活を築こうとする男性を、松下洸平が繊細に演じている。
フランク/三浦友和
イギリスでの悦子の夫。異文化の中で家族を支える温かい人物を三浦友和がベテランの安定感で演じている。
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その他にも柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜など実力派キャストが脇を固め、物語に深みと厚みを加えています。
5. 映画『遠い山なみの光』ロケ地完全ガイド
本作は2024年6月から9月にかけて、長崎を中心とした日本各地とイギリスで撮影が行われました。戦後80周年という節目の年に、実際の被爆地である長崎で撮影されたことに深い意味があります。さらに2024年10月〜2025年1月に日本とポーランドでポストプロダクションが実施されました。
5-1. 長崎県
5-1-1. 稲佐山
映画では悦子が長崎の街を見下ろす象徴的なシーンで登場。原作にも「ケーブルカー」の名称で登場し、記憶と現実を繋ぐ重要な舞台となっています。長崎港を一望できる美しい景色が、物語の郷愁を演出しています。
夕暮れ時の長崎の街並みを背景にした重要なシーンが撮影されました
5-1-2. 長崎市街地・市電沿線
戦後復興期の長崎の生活感を演出するため、市電の走る街並みや操車場周辺で撮影。当時の賑わいや人々の暮らしを再現するための重要なロケーション。
5-1-3. 平和公園
原作にも登場する「白い巨像」(平和祈念像)が印象的に使用されています。戦争の記憶と現在を繋ぐ象徴的な場所として、物語の重要なメッセージを担っています。
5-1-4. 南山手エリア(オランダ坂~グラバー園)
洋風建築が立ち並ぶエリアで、悦子と佐知子の交流シーンが撮影されました。異国情緒漂う街並みが、戦後の国際的な雰囲気を演出しています。
5-1-5. 魚ん町+(うおんまちプラス)
映画公開記念として、昭和レトロな空間を体験できる見学ツアーが開催されるなど、撮影の舞台となった建物として注目されています。
映画『遠い山なみの光』
公開記念イベント開催中🎬️イベント会場の外観を
撮影してみました💫💫
レトロな雰囲気で、ステキです😊📍魚ん町+(長崎市魚の町2‐18)
🔗イベントについてhttps://t.co/L8tgDfK1Qe#遠い山なみの光 pic.twitter.com/wxWpiLxQqa— 長崎県フィルムコミッション (@NagasakiFC) August 28, 2025
5-2. 千葉県
5-2-1. 印旛沼周辺
1950年代の長崎の街並みを再現した大規模なオープンセットが組まれました。浜屋百貨店の看板や赤レンガ調の建物、昭和の生活感あふれる路地裏まで、細部にまでこだわった空間が作られ、地元住民も見学に訪れるほどリアルな再現度でした。
5-3. イギリス
5-3-1.1980年代のイギリス
1980年代のイギリスパートで使用。ニキと悦子の現在の生活や、悦子がイギリスに渡った後の人生を描く重要なロケーションです。Number 9 Films(イギリスの制作会社)との国際共同制作により実現しました。
6. まとめ:映画『遠い山なみの光』を見るべき理由
【見るべきポイント】
・ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロのデビュー作を石川慶監督が映像化
・広瀬すず×二階堂ふみの初共演による繊細な演技
・戦後80周年の節目に描かれる長崎とイギリスの壮大な物語
・記憶と現実の境界線を描く巧妙なミステリー構造
・第78回カンヌ国際映画祭正式出品作品
・実際の長崎とイギリスで撮影された圧巻のロケーション
戦争を直接描くのではなく、人の心に刻まれた見えない傷跡と、それを乗り越えて生きる人々の姿を繊細に描いた本作は、観る人それぞれに異なる解釈と感動を与えてくれる作品です。
原作を読んだことがある人も、初めて触れる人も、映画という新たな表現で描かれたカズオ・イシグロの世界に深い感動を覚えることでしょう。